高齢化社会が進む昨今、病気の早期発見・早期治療に関心が高まっています。特に注目されるのが、私たち日本人の死因第1位をしめるがん。発症率は依然高く、男性の2人に1人、女性の3人に1人が生涯でがんにかかる可能性があると推測されています。
一方で、がん検診の受診率は全体の3割という低い水準にとどまっています。受診者の費用負担が大きいことや、部位別の検診で時間がかかることが要因にあり、手軽で安価な検診が求められていました。
こうした課題を解決するため、がん患者のある特徴を利用した新たな検診が生まれています。それは受診者の“におい”でがんを嗅ぎ分けるというものです。
町民のがん死亡率に課題を抱えていた山形県金山町。手軽に受けられる検診として全国で初めて「がん探知犬」を導入しました。
がん探知犬は、試験管に入った人間の尿をかぎわけ、がんの有無を判定。がんに罹患していると判断したときは、振り返って担当者に伝えます。その発見率はほぼ100%に近い実績があり、2017年度、同町では1,000人を対象に実施予定です。
探知犬が1日に検査できる回数が限られていること、また探知犬を育てるのに約500万円の費用がかかること・・・課題はゼロではありません。ただ、従来の検診に比べ手軽にがんを早期発見でき、結果的に医療費を安く抑えられます。町民が元気に暮らす町づくりの一環として、同町では今後も実施を拡大する考えです。
がん患者のにおいを嗅ぎ分ける生物として、犬と同等以上の嗅覚をもった線虫を利用した研究も進められています。2017年4月、日立製作所とHIROTSUバイオサイエンスは線虫によるがん検査の共同研究開始を発表しました。
体長1ミリほどの線虫はがん患者の尿には近づき、健康な人の尿からは離れるという特性をもちます。プレートに受診者の尿と線虫を配置し、線虫の動いた向きを解析することで、9割を越える精度でがんの有無を判定できることが分かりました。線虫は安価に培養できるため、実現すれば検査費用は1人数千円で済むと見込まれています。
安価で手軽な検診方法の開発が進めば、誰もが気軽にがん検診を受けられます。平均寿命が100歳を超える未来も、そう遠くはないかもしれませんね。
<参考>
がん探知犬全国初導入 尿かぎ分け判定 – 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201704/20170429_53013.html
全国初「がん探知犬」で早期発見へ 死亡率全国ワーストの山形・金山 – 産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/170622/rgn1706220055-n1.html
尿1滴で、線虫が早期がんを嗅ぎ分ける! ――95.8%という驚きの高感度 - mugendai
http://www.mugendai-web.jp/archives/5131
線虫でがん検査 日立など、19年末の実用化めざす - 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG18H1O_Y7A410C1000000/